銀河不動産は、店を移転せざるを得なくなり、とりあえず、私が住んでいた山の上の不思議な建物が仮の事務所となった。
まだなんとか、それくらいのスペースは絞り出すことができたのだ。 だから、Sさんは、あそこへ通うことになって、私は車で駅まで毎日彼女を迎えにいったものである。
あの場所では大変不便なため、一般の客はまず来ない。 だから、インターネットを使った商売に切り換えるしかなかった。
だが、これが結果的に大成功だったのである。 また、T子さんの父・Iさんが手がける小さな遊園地の事業にも関わることになった。
これが最初に成功を収め、次に、その遊園地の隣に、ちょっとしたライブハウスを建設して経営することになった。 このプロジェクトにはTさんが力になってくれた。

彼は今、その施設の支配人になっているし、Kさんは、そのライブハウスでまだ現役で演奏を続けている。 私たちは、趣味的な小さな事業を幾つか展開し、いずれも成功させた。

大きな企業がやらないようなマイナーなものばかりだったけれど、それが成功の理由だったのだろう。 どれも、かけた費用の割にはそこそこの利潤を産み出した。
現在では、遊園地、ホテル、ライブハウス、ゲームセンタなどを多角的に経営しているし、もちろん、不動産の本業も健在である。 銀河グループの建物には、どこも玄関の脇に小さな恐竜のオブジェが据えられている。
「そうですね、今から行ってみましょうか?」彼女が提案する。 「今から?でも、K子が待っているよ」私は言った。
K子というのは、娘の名だ。 Mさんが製作したトリケラトプスである。
これは子供たちに大人気だ。 この恐竜のシルエットが、今では我が社のマークにもなっている。

Yさんは、その後ベストセラ作家になった。 数々の文学賞も受賞し、まさに時の人である。
彼女は、私たちが住んでいたあの変な家を舞台にして、「銀河の一族」という小説を書き、これが彼女のデビュー作になったのだ。 ドラマや映画にもなって大ヒットし、ひと頃は、あそこへ見物人が大勢押し掛けるほど賑わったものである。
食事をしながら、私たちは、そんな十数年間の思い出話をした。 あっという間だったように思う。 前だけを向いて必死で歩いてきた。 今夜ようやく、あのミニチュアを見たことで、懐かしく振り返ることができたのだ。

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